slave 奴隷

slave / sléiv

奴隷、奴隷の様に働く人、(欲望・習慣の)とりこ、奴隷の様に働く

Better to starve free than be a fat slave.
太った奴隷になるより、飢えても自由の方が良い。

※古代ギリシャの寓話作家 アイソーポス(英語読みだとイソップ)の言葉
アイソーポスの生涯は謎が多いが、元はサモスの市民イアドモンの奴隷だったという。上記の言葉は “犬とオオカミ” の最後の言葉である。少し長くなるが、全文を紹介しよう。

The Dog and the Wolf
A gaunt Wolf was almost dead with hunger when he happened to meet a House-dog who was passing by. “Ah, Cousin,” said the Dog. “I knew how it would be; your irregular life will soon be the ruin of you. Why do you not work steadily as I do, and get your food regularly given to you?” “I would have no objection,” said the Wolf, “if I could only get a place.” “I will easily arrange that for you,” said the Dog; “come with me to my master and you shall share my work.” So the Wolf and the Dog went towards the town together. On the way there the Wolf noticed that the hair on a certain part of the Dog’s neck was very much worn away, so he asked him how that had come about. “Oh, it is nothing,” said the Dog. “That is only the place where the collar is put on at night to keep me chained up; it chafes a bit, but one soon gets used to it.” “Is that all?” said the Wolf. “Then good-bye to you, Master Dog.”
Better starve free than be a fat slave.

犬とオオカミ
痩せ衰えたオオカミが空腹で死にそうになっている所に、一匹の飼い犬が通りかかった。

犬「やあ兄弟。日々をふらふらと送ってるからそんな事になるんですよ。私の様にきちんとした仕事に就いて、毎日きちんとした食事をもらっちゃどうですか?」

オオカミ「まったくお前さんの言う通りだよ。ただそんな仕事があるのかい?」

犬「簡単な事ですよ。ひとつ私のご主人様に頼んでみますから、一緒に働きましょう。」

こうして犬とオオカミは連れ立って町へ行くことになった。町へ向かう道の途中でオオカミは犬の首に毛が薄くなっている部分がある事に気づき、どうしたのか尋ねた。

犬「大した事じゃありませんよ。夜中に私が逃げ出さないようにと、鎖につなぐ首輪が少しこすれるってだけです。すぐに慣れますよ。」

オオカミ「それ本当かい?そんな事なら僕はさよならさせてもらうよ、飼い犬君。」

– 太った奴隷になるより、飢えても自由の方が良い。

slave away 奴隷の様に働く
slave [worker] ant 働き蟻
slave driver 奴隷監督、人使いの荒い人
slave market 奴隷市場、職業安定所(米俗)
slave ship 奴隷船
slave labor 奴隷の労働、割りに合わない仕事
slave to [of] ~の奴隷、~のとりこ
slave to drink 酒のとりこ、アルコール依存症の人
slave trade 奴隷売買
emancipation of slaves 奴隷解放

語源 ラテン語 スラブ人 Sclavus
※中世初期に多くのスラブ人が奴隷とされた事から

freedom 自由

freedom / fríːdəm

自由、(行動の)自由・気軽さ・無遠慮さ・なれなれしさ、(束縛・負担からの)解放・免除、出入りの自由、特権

Freedom is not worth having if it does not include the freedom to make mistakes.
過ちを犯す自由が含まれていなければ、その自由には何の価値も無い。

※インドの弁護士、宗教家、政治指導者、インド独立の父 マハトマ・ガンジーの言葉
not worth doing で “~する価値が無い” という熟語表現となるが、回りくどいので上記の様に訳した。

speak with freedom 思いのままに話す
take [use] freedoms with ~になれなれしくする
freedom from ~からの自由[解放]、~の免除
freedom from want 貧困[欠乏]からの解放
freedom from fear 恐怖からの解放
freedom from import duties 輸入税免除
freedom of ~の自由
freedom of assembly 集会の自由
freedom of association 結社の自由
freedom of a city 名誉市民権
freedom of choice in employment 職業選択の自由
freedom of religion 信教の自由
freedom of speech 言論の自由
freedom of the press 出版[報道]の自由
freedom of thought 思想・良心の自由
freedom to do ~する自由

liberty 自由

liberty / líbɚti

(束縛からの)自由・解放、(選択の)自由、(行動の)自由、勝手な[無作法な]振る舞い、(公認された)特権、(船員の短い)上陸許可(※通例48時間以内、それ以上だと “leave / 休暇” となる。)

Give me liberty or give me death.
我に自由を与えよ、然らずんば死を与えよ。

※アメリカ建国の父の一人 弁護士・政治家 パトリック・ヘンリーの言葉
1775年3月23日にバージニアで行われた有名な演説の結びの言葉である。ヘンリーのこの演説は独立に向かうバージニアの気運を決定づけたと言われる。もう少し長く紹介すると以下の様になる。

It is in vain, sir, to extentuate the matter. Gentlemen may cry, Peace, Peace–but there is no peace. The war is actually begun! The next gale that sweeps from the north will bring to our ears the clash of resounding arms! Our brethren are already in the field! Why stand we here idle? What is it that gentlemen wish? What would they have? Is life so dear, or peace so sweet, as to be purchased at the price of chains and slavery? Forbid it, Almighty God! I know not what course others may take; but as for me, give me liberty or give me death!

問題を先延ばしにするのは無駄な事です。紳士諸君は平和と叫ぶでしょうが、今は平和などありません。戦争は現に始まっているのです!今度北から風が吹けば、銃と鉄剣の響きを運んで来ることでしょう!我らの兄弟は既に戦場にいるのです!どうして我々はここで無為の時を過ごしているのですか?紳士諸君の望みは何でしょうか?いったい何が得られると言うのでしょう?鎖と隷属の対価で購われるほど命は尊く、平和は甘美なものでしょうか?全能の神にかけて、断じてそうではない!他の人々がどの道を選ぶか知りませんが、私はこの道を行きます。我に自由を与えよ、然らずんば死を与えよ!

※extentuate はどの辞書で調べても見つからない単語であったが、文脈からおそらく “extent + -ate” という意味と思われるので以上の様に訳した。

at liberty 解放されて、自由で、暇で
at liberty to do 勝手に~できる、自由に~してよい
grant A liberty to do Aに~する許可[自由]を与える
take liberties with ~になれなれしくする、~を勝手に変える、~という事実を曲げる、~に無謀なことをする
individual liberty 個人の自由
natural liberty 天賦の自由

語源 ラテン語 自由な liber

raja 藩王

raja, rajah / ráːʤə

(インド・ヒンドゥー教国の)王・藩王、ラージャ

※Maharaja でマハラジャ・マハーラージャ、大王の意味となる。

The etymology of raja ,Sanskrit rājan, is cognate to Latin rēx , Gaulish rīx etc., originally denoting Aryan tribal chiefs.
ラージャの語源であるサンスクリット語の “rājan” は、ラテン語の”rēx” やガリア語の “rīx” などと同根語であり、元来はアーリア人の部族長を意味する。

※この辺りは同じインド・ヨーロッパ語族のため関係が深く、以前紹介した reign も同根語である。

語源 サンスクリット語 王 rājan

その他の君主号の主なものとしては以下の様なものがある。
imperator インペラトル:古代ローマの軍司令官、皇帝の称号。
Caesar カエサル:ローマ皇帝の称号のひとつ。
Augustus アウグストゥス:ローマ皇帝の称号のひとつ。
tsar, czar ツァーリ:ロシア皇帝の称号。
pharaoh ファラオ:古代エジプトの王の称号。
khan ハーン:アジアの遊牧民の王の称号。

emir (イスラム教国の)首長

emir / imíɚ, emíə

(イスラム教国の)首長、アミール

※現在首長の称号を持つ君主がいる国は、アラブ首長国連邦、クェート、カタールである。この内のアラブ首長国連邦はアブダビ、ドバイ、シャールジャ、アジュマーン、ウンム・アル=カイワイン、フジャイラ、ラアス・アル=ハイマの7つの首長国による連邦国家で、国家元首である大統領には7人の首長で構成された連邦最高評議会によって代々アブダビの首長が、副大統領にはドバイの首長が就任する事になっている。

Emir is a high title of nobility or office, used throughout the Muslim world.
アミールとは、イスラム世界で使用される高位の貴族や軍幹部に対する称号である。

語源 アラビア語 司令官 amīr

※他にイスラム世界の君主の称号としては以下の様なものがある。
caliph カリフ:ムハンマド亡き後のイスラム共同体の最高権威者の称号、現在は存在しない。
malik マリク:イスラム世界で王を意味する称号。
shah シャー:ペルシア、イスラム世界で王を意味する称号。
sheikh,sheik シャイフ:イスラム世界における首長、族長、長老などに対する敬称、尊称。

sultan スルターン

sultan / sʌ́ltən

スルターン[スルタン, サルタン]、イスラム教国の君主[国王]、(the Sultan で)オスマン・トルコ皇帝

※現在スルターンの称号を持つ君主がいる国は、ブルネイ、オマーン、マレーシアである。特にマレーシアの制度はかなり特殊で、マレーシア13州の内の9つの州に首長がおり(内7名がスルターンの称号を持つ)、5年毎の交代(形式的には首長9名による選挙、実質的には輪番制)でマレーシアの君主(Yang di-Pertuan Agong)を務めるというものである。

Sultan Selim I dramatically expanded the Empire’s eastern and southern frontiers by defeating Shah Ismail of Safavid Persia, in the Battle of Chaldiran.
オスマン皇帝セリム1世は、チャルディラーンの戦いにおいてサファヴィー朝ペルシアのイスマーイール1世を破り、帝国の東方と南方に広大な領土を獲得した。

sultan of Brunei ブルネイ国王

語源 アラビア語 君主、権力 sulṭān

despot 専制君主

despot / déspət

専制君主、独裁者、暴君、ビザンティン[東ローマ]皇帝

Idealism is the despot of thought, just as politics is the despot of will.
政治が意思を支配する様に、観念論は思想を支配する。

※ロシアの哲学者、アナキスト、革命家、無神論者 ミハイル・バクーニンの言葉
“the despot of ~” を “~の専制君主” と訳すと意味が解りにくいので、”~を支配する” と言い換えた。

enlightened despot 啓蒙専制君主

語源 ギリシャ語 主人・君主 despotēs

※dictator(独裁者), tyrant(暴君), autocrat(専制君主), despot(専制君主) の違いはネイティブでさえ混同するほどなので、英語の問題というよりは政治や歴史の問題である。しかし日本語の “独裁” と “専制” の違いくらいは知っておきたい。

独裁政治
民主的手続きを否定し、統治者の独断によって行われる政治。操作による大衆の動員・参加を前提にする点で、身分制を基礎にした専制政治とは異なる。古代ローマの戦時または非常時における独裁官による政治、イタリアのファシズム、ドイツのナチズムがその典型とされる。

専制政治
支配者と被治者とが完全に断絶していた前近代的社会において、国家の統治権を君主あるいは少数の者が独占し、かつ恣意的に行使する政治体制。

– 大辞林 第二版より

autocrat 専制君主

autocrat / ɔ́ːtəkræ̀t

専制君主、独裁者

I shall be an autocrat: that’s my trade. And the good Lord will forgive me: that’s his.
私は専制君主になるわ、それが私の仕事だから。そして神は私をお許しになるわ、それが神のお仕事だから。

※ロシア皇帝 エカチェリーナ2世の言葉
なおエカチェリーナは夫のピョートル3世をクーデターによって打倒して皇帝の座についた。

語源 ギリシャ語 専制者 autokratēs (aut- + -kratēs 「支配」)

tyrant 暴君

tyrant / tái(ə)rənt

暴君、圧制者、専制君主、(古代ギリシャの)僭主

The only tyrant I accept in this world is the still voice within.
私が唯一この世で従う専制者は、静かな心の内なる声だけである。

※インドの弁護士、宗教家、政治指導者、インド独立の父 マハトマ・ガンジーの言葉
ここでの tyrant を暴君と訳してしまうと、なんだか本能の赴くままに行動する様な印象になってしまう。おそらくガンジーは “自分を支配できるのは自分(内なる声)だけ” という意味で言ったと思われるので、専制者という訳語をあてた。

act like a tyrant 暴君の様に振る舞う

語源 ギリシャ語 僭主 tyrannos

dictator 独裁者

dictator / díkteitɚ, diktéitɚ

独裁者、(古代ローマの)独裁官 、口述者、口授者

Every anarchist is a baffled dictator.
全てのアナキストは独裁者の出来損ないである。

※ベニート・ムッソリーニの言葉
自らが独裁者であるムッソリーニが言うと皮肉に聞こえる。

語源 ラテン語 繰り返し言う dictare